摩季れい子公式サイト ホーム 仕事内容 インタビュー コメント トレーナー日記 メール
« 最近の野球選手科 |  日記のトップへ | 野球トレーナーとして »

徐君の3戦目・石田君の復活

朝から先発ピッチャーと前日に監督から伝えられている。私は徐君と試合中、試合後にコミュにーケーションを取れるよう通訳の申さんを同乗し、別の車で明石球場に向った。車の中で申さんに言う。
「朝の徐君に笑顔が見られれば今日は精神的にも落ち着いているから安心できます。朝一の表情が今日の彼の出来を物語っていると思って下さい。
「そうなんですか? わかりました」
初戦の緊張感や、大きな試合で先発に起用され、チームの期待にこたえようとしたことで自分のリズムを失った徐君が今日、リベンジする。
朝グラウンド入りすると徐君の笑顔が見えた。

「よし、今日は落ち着いているぞ。いけそうだ」と確信する。
ブルペンでも、先発を任せられる意気込みがボールに伝わるいい感じだ。前日のグラウンドで確認し合った、右腕で引きすぎないこと、その為にはテイクバックをセンター軸から作り出すことと、アクセレレーションに入るタイミングでは下半身の特に腰の回転を速くすることを指導。そうすることで体重移動をスムーズにし、腕を体の前で振りやすくするからと説明。
テイクバック時に右手を引きすぎで腕がアクセレレーションからリリースと粘りすぎ、前に出にくくなる事をとことん説明し、今日の試合に対しての課題は頭の軸と腰回転、下半身主動でのピッチングに挑戦すること。今日徐君とバッテリーを組むのは、4月に入学し、1週間前に徐君のボールを受けはじめた17歳のキャッチャー田君。まだまだキャリアは少ない。なんといっても中学生以来はじめてのマスク。それに硬式。まして3日前にぎっくり腰をして立てなくなった田がボールを受けるのだ。
育成コーチの私としては彼にキャッチャーマスクを被ってほしい。そして大きく成長して欲しい。そんな願いで今日の日に座れる様トレーナーとして彼の腰を治した。(徒手ナチュラル矯正法で)
腹筋も出来ず、寝がえりや起き上がる動作も上手くいかない、3日前まで走れなかった選手が今日徐とバッテリーを組む。筋肉を戻し、骨盤の歪みを矯正。3日間の野球Fトレーニングで体を野球人に戻しての復活だ。
思う存分とまではいかなくても、精一杯痛みをこらえ、徐君のボールを取り続けているのが彼の動きからわかる。頑張れ。腰痛を持った選手は一瞬立つという動作にリスクが生じる。キャッチャーはボールに反応しなくてはならない。
そしてチームのリーダーでもあるキャッチャーとして、徐君とのリズムを考え、チームへの指示や守りのリズムを考えなければならない重要なポジションである。
「頑張れ、田」
「ハイ、頑張ります」
「大丈夫か?」
「ハイ、なんとか」
「やれるか?」
「ハイ、やります」
強い心で私に答える。
さまざまな課題を持ってのバッテリーだけに、前半1~4イニング目まで息が合わずパスミスや捕球ミス、打たれることもあった。
だが、「田君、もっと徐君と息を合わすんだよ。徐君と次のボールを確認してミットを構え、彼が頷いてからミットを移動させろ。移動が早すぎる」と指摘。
「ハイ」
それからタイミングが上手く取れ、徐も落ち着きを見せ、企業チーム相手に変化球、ストレートを織り交ぜながら7イニングを4失点で抑えたが、次の3試合を考え、ここで降板。「今日は少し自分のピッチングリズムで出来ました。でもまだまだ100%の力で思い切り腕をふれていません」とのコメント。
「うん。これから時間をかけよう。まだ2か月が過ぎただけ。今の課題を充分にマスターすれば、思う存分腕が振れるし、ストレートが伸びるよ。頑張れ」とエールを送り次の選手を見守る。

●石田の復活
3月末に先発ピッチャーを担当した石田が内側の肘を痛め、医師からもフォーム改造が必要との指摘もあり、手腕のパワーだけで投げていたフォームから脚腰のパワーを使ったスリークロス投法へのフォーム改造に取り組んだ。フォーム改造は肘を痛める前からの課題でもあったが、6月に開催される都市対抗に向け、毎日毎日厳しいトレーニングとリハビリプログラム、フォームのタイミング作りを続けてきた。6月に入ってようやく肘の痛みや違和感も楽になり、試合で3イニングは投げられるところまで回復。
4月の九州大会、5月のクラブ選手権には登板できず、悔しい思いをした。その悔しさを胸に、故障からの復活を目指し人一倍努力し、取り組んできた石田である。ようやく6月13日の新日鐵戦で徐に次いで登板。2番手を任されたが、練習試合で登板した際の疲労の調整が追いついていなかったせいか、1イニング1/3で7ヒットと残念な結果となり、ここ最近の石田自身のピッチングが発揮できぬまま途中降板。無念であり、悔しい思いをひしと感じている石田である。
「どうやった?」
「解りません、なぜ打たれたのかは」と呆然とする石田に、
「腕が振れなかった原因が必ずあるはずだよ。今日はBEST-UPで調整し、確認しよう。肘さえ調子よければ2日後にリベンジしよう」
「ハイ」と気力が失われそうな石田からの弱々しい返事がそこにあった。

分析の結果、ピッチングのアクセレレーションからフォローにかけて、上体が前に倒れすぎ、持ち前の上体の回転から出る腕振りの速さが使えていなかったことを本人に伝え、そのタイミングを作る。石田の顔が生き返ってきた。今日登板した彼の肘のケアを済ませた後フォームバランスチェック、イメージが上がり終了。次へ気分を切り替えることを確認して明日のブルペンへ繋いだ。
今日、あいにくの雨。その中で石田はもくもくと投げた。
「イメージは?」
「いいです」
「明日なげるか?」
「ハイ。投げたいです」
「石田君に足らないのは何か解るか?」
「・・・・・」
少し間が空いてから「勝負心です」
「そうや。それや。明日の試合、もし投げるんであればその気持ちを前に出して投げてごらん」
「はい」
「それともうひとつは、ピッチャーは独りで孤独になげたらあかん。必ず、みんなに支えられてファインプレーを引き出せるピッチャーになるのや。そしたら、君も良いリズムをつくれるで。技術はこの3ヶ月でグーンと伸びている。伸び盛りの石田や。解ったか。投げ急がず、チームに声をかけろ。そうするとピッチングが安定するで。いいな」
「ハイ。頑張ります」

自分のピッチング、リズムに足りない間を作れそうなイメージが出来たのであろう。笑顔で私に頷いてくれた。

投稿者 kanrisya|2007年06月13日 21:15 |トラックバック (0)| 日記投稿数 406|

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.makireiko.net/mt/mt-tb.cgi/237